印刷における文字の最小サイズを知らないで、印刷をすると「モニター上では読めたのに、印刷したら文字が潰れてしまった…」なんてことになりかねません。
印刷物における文字の「可読性」は、情報を正確に伝えるための生命線です。特に、名刺やショップカードなどで小さな文字を使う場合、フォントのサイズや種類の選び方が、仕上がりの品質を大きく左右します。そして、小さすぎる文字は印刷時に潰れたり、かすれたりする原因となります。
このページでは、オンデマンド印刷で美しく文字を再現するための、適切なフォントサイズと選び方のポイントを解説します。
DTP(デスクトップパブリッシング)で一般的に使われるフォントサイズの単位は「ポイント(pt)」です。
1ptはおよそ0.35mmに相当しますが、文字を選ぶ際は、mm単位でなくptの単位で数えます。なお、Webデザインにおいては「ピクセル(px)」という単位も頻繁に使用されますが、これらの単位は異なるものの、文字の大きさの概念は共通しています。
フォントを選ぶ注意点としては、同じポイント数でも、フォントの種類(書体)によって見た目の大きさは異なります。
これは、フォントが文字本体だけでなく、文字の上下左右に設計された「余白」を含んでデザインされているためです。この余白の取り方がフォントごとに違うため、同じサイズでも大きく見えたり、小さく見えたりするのです。
では、印刷データにはどのくらいのフォントサイズが必要なのでしょうか?
当社のオンデマンド印刷では、可読性を保つための推奨フォントサイズを 6pt(ポイント)以上としています。
それは、オンデマンド印刷の特性と、人間が文字を認識する限界が関係しており、小さすぎる文字には以下のようなトラブルが発生しやすくなります。
オンデマンド印刷では粉状のトナーを熱で定着させます。非常に小さな文字や、特に漢字の画数が多い部分などは、トナーが乗りきらずに潰れたり、逆にかすれたりする原因になります。
色付きの文字(特にリッチブラック)は、CMYKの4色のトナーを重ねて表現します。小さな文字の場合、わずかな印刷位置のズレが文字の滲みとなり、可読性を著しく低下させます。
印刷では、色の濃淡を「網点」と呼ばれる非常に小さな点の密度で表現します。例えば「C シアン 20%」は、水色の点を20%の密度で印刷することで表現しており、拡大すると以下のようになってます。
そのため、文字の濃度が薄い(特に20%以下)場合、網点の隙間が大きくなり、文字の線が途切れたように見え、非常に読みにくくなります。小さな文字に薄い色を設定するのは避けてください。
文字の色や紙の種類によって、推奨される最小サイズは変わってきます。一般的な目安は以下の通りです。
| 条件 | 推奨最小サイズ | 補足・注意点 |
|---|---|---|
| K100%(スミベタ)の文字 | 5~6pt | 最も再現性が高く、比較的小さな文字まで読めます。ただし可読性を考慮し6pt以上を強く推奨します。 |
| 色付き・リッチブラックの文字 | 7~8pt | 版ズレによる滲みを防ぐため、K100%より一回り大きいサイズが必要です。 |
| 白抜きの文字(背景に色) | 7~8pt | 背景のトナーに文字が埋もれて細くなりやすいため、太めの書体(ウェイト)を選び、大きめのサイズに設定してください。 |
| 細いウェイトのフォント (Light/Thin等) | 8pt以上 | 線が細すぎて印刷時にかすれたり、途切れたりする可能性があります。特に30%以下濃度は要注意。の使用は慎重に検討し、大きめのサイズでご使用ください。 |
ゴシック体は線の太さが均一で、小さなサイズでも視認性が高いため、印刷の可読性に優れています。(例: 游ゴシック、メイリオ、ヒラギノ角ゴシック、 Noto Sans CJK JP など)
明朝体は横線が細いため、小さなサイズでは線がかすれることがあります。可読性を重視する場合は、少し太めのウェイトを選ぶことをお勧めします。
アウトラン化は、PC環境にないフォントの文字化けやレイアウト崩れを防ぐために、データ入稿時のトラブル回避策として非常に有効です。ただし、アウトライン化すると若干に文字が太くなるため、極端に小さな文字では印象が変わる可能性に留意してください。
推奨はできませんが、デザインの都合上どうしても5ptなどの小さな文字を使用したい場合は、以下のリスク対策をご自身の判断で行ってください。
これにより、網点による文字のかすれを軽減できますが、文字潰れや見当ズレのリスクがなくなるわけではありません。
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