「白って200色あんねん」は本当?モニターと印刷の色の違いと解決策 のカバー画像

「仕上がりを見たら、思っていた色と全然違う…」「この前と色が違う…」名刺やショップカードを印刷会社に発注した際に、こんな経験はありませんか?実はこれ、印刷業界では”あるある”な悩みなんです。

有名な「白って200色あんねん」という言葉。これは、私たちが「白」と認識している色に、実は微妙な違いがたくさんあることを的確に表しています。この”色の認識の違い”こそが、デザインデータと印刷物の間で色ブレ色ズレが起こる大きな原因なのです。

今回は、なぜこのような色が違うという問題が起きるのか、その原因と、弊社が提供する解決策について詳しく解説していきます。

そもそも、モニターと印刷では色の作り方が違う!RGBとCMYKの基本

まず知っておきたいのが、パソコンのモニターと印刷物では、色を表現する仕組みが根本的に異なるという点です。

RGBとCMYKの基本三原色とRGBからCMYKに変換した時に起こる色のくすみ
  • RGB:モニターで使われる「光の三原色」。Red(赤)、Green(緑)、Blue(青)を混ぜて色を作ります。混ぜるほどに明るくなり、すべてを混ぜると「白」になります。
  • CMYK:印刷物で使われる「色の三原色」。Cyan(シアン)、Magenta(マゼンタ)、Yellow(イエロー)に、黒(Key plate)を加えたインクを混ぜて色を表現します。混ぜるほどに暗くなり、理論上は3色を混ぜると「黒」になります。

つまり、光で色を表現するRGBと、インクで色を表現するCMYKでは、表現できる色の範囲(色域)が異なります。一般的にRGBの方が表現できる色の範囲が広いため、モニター上の鮮やかな色が、CMYKに変換すると少し沈んだ色合いに見えてしまうことがあるのです。これが「仕上りと違う」と感じる最初の原因です。

日常にも潜む「色の違い」の具体例

実は、色の違いは印刷に限った話ではありません。私たちの身の回りで使っているカメラやスマートフォン、パソコンのモニターも、一台一台、メーカーごとに表現される「色」は異なっています。
「同じ写真なのに、友人のスマホで見ると印象が違う…」と感じたことはありませんか?それは故障ではなく、各メーカーが持つ「色作りの思想」の違いによるものです。

撮る人の心に響く「色」を追求するカメラメーカーによる色味の違い

撮る人の心に響く「色」を追求するカメラメーカーによる色味の違い

同じ風景を撮影しても、カメラのメーカーが違えば、仕上がる写真の色味は変わってきます。これは、各メーカーが「どんな色を美しいと感じるか」「どんな色をユーザーに届けたいか」という、独自の哲学に基づいて映像エンジンを設計しているからです。

  • キヤノン(Canon)
    人物の肌を健康的で温かみのある、記憶の中の印象に近い色合いで表現するのが得意と言われます。ポートレート撮影で長年支持される理由の一つです。
  • ソニー(SONY)
    透明感があり、少し青みがかったシャープな表現が特徴的。都会的でクールな、被写体の質感を際立たせるような色作りが魅力です。
  • ニコン(Nikon)
    見た目に忠実で、ありのままの自然な色を再現することに重きを置いていると言われます。風景写真などで、その場の空気感まで写し撮るような実直さがあります。

メーカーごとの「色の個性」こそが、多くのカメラファンを惹きつける魅力となっているのです。

今見ているモニターやスマホによる色の違い

モニターやスマホによる色の違い

同じパソコンでも、接続するモニターによって色の見え方は大きく変わります。ノートパソコンの画面と、接続した外部モニターの色が全然違う、と感じたことはありませんか?あるいは、iPhoneとAndroidのスマートフォンで、同じWebサイトを見比べて色の鮮やかさの違いに気づいたことがあるかもしれません。

これは、モニターのメーカー、機種、使われているパネル(液晶・有機ELなど)の違い、さらには経年劣化によっても起こる現象です。

もちろん、プロのデザイナーやフォトグラファーの世界では、この色のズレは致命的な問題になります。そのため、色を正確に再現するための「カラーマネジメントモニター」という高価な専用機材を使用し、さらに定期的な調整(キャリブレーション)を行って、基準となる色環境を維持しています。

「記憶色」か「忠実色」か。家庭用プリンターの個性

家庭用プリンターの個性

自宅やオフィスで使用しているインクジェットプリンターも、メーカーによって得意な色表現が異なります。同じ写真データを印刷しても、各社が目指す「美しいプリント」の方向性が違うため、仕上がりにはっきりと差が出ます。

  • エプソン(EPSON)
    「記憶色」と呼ばれる、人の記憶に残っているような鮮やかでメリハリの効いた色表現が得意と言われます。旅先の風景などを色鮮やかに残したい場合に人気です。
  • キヤノン(Canon)
    「忠実色」を重視し、元データに対して自然で落ち着いた色再現をする傾向があります。元の作品の雰囲気を崩さずにプリントしたい場合に適しています。

ちょっと余談ですが、インクジェット印刷の仕組みと色安定性について

インクジェット印刷は、液体状のインクをノズルから微細な粒子の霧として紙に直接噴射して色をつけます。そのため、色ブレが少なく安定した色再現が可能となっています。

  • インクの定着方法: インクは紙の繊維に染み込むように定着します。インクが混ざり合いやすく、また、光の吸収や反射の特性も安定しているため、鮮やかで滑らかな色再現が可能です。
  • インクの種類: 近年のインクジェットプリンターは、CMYKの4色だけでなく、ライトシアンやライトマゼンタ、フォロブルー、グレーなどの補助色インクを搭載している機種も多くあります。これにより、より広い色域を表現し、滑らかな階調表現や色の安定性を高めています。
  • 精密な制御: インクを噴射するノズルやヘッドの制御が非常に精密で、ドットの位置や量を正確にコントロールできるため、常に安定した色味を再現しやすいです。

なぜ?モニターの色と会社の複合機で印刷した色が大きく違う理由

会社の複合機で印刷した色が大きく違う理由

このように、私たちの身の回りにある色を表現している製品では、それぞれのメーカーが独自の基準で「最適な色」を追求しています。色を統一しないのは、「色」こそが製品の魅力を伝え、ブランドの個性を際立たせる重要な要素となっているからです。

さて、ここから本題に入って行きます。
「モニターで作ったデザインを会社の複合機で印刷したら、色が全然違った…」という経験は、多くの方がお持ちではないでしょうか。

一方で、「家庭用のインクジェットプリンターだと、比較的イメージに近い色で印刷される」と感じることも多いはずです。その理由は、家庭用プリンターの多くが、RGBのデータを綺麗にCMYKへ変換する優秀なソフトウェア(プリンタードライバー)を搭載しているからです。写真などを手軽に印刷することを想定しているため、自動で色を”いい感じ”に補正してくれるのです。

しかし、業務用複合機や印刷会社の印刷機は、忠実なデータ再現を目的としているため、このような自動補正は最小限です。そのため、RGBで作られたデータは、CMYKに変換される際に色の差がはっきりと出てしまうのです。

色の正解がない世界で「基準」を合わせるには?

「白って200色あんねん」に潜む、色の曖昧さ

これまで見てきたように、カメラもモニターもプリンターも、各メーカーが独自の基準で「最適な色」を管理・表現しています。つまり、色に絶対的な「正解」はないのです。「白って200色あんねん」という言葉は、この色の曖昧さを的確に捉えています。

だからこそ、特に商業印刷の世界では、発注者と受注者の間で色の認識を合わせるための「基準」が必要になります。そこで、印刷業界では、一般社団法人日本印刷産業機械工業会が定めた、「JAPAN COLOR」と言う、色を決めた制度がございます。

色の認識を合わせる基準

CMYKの印刷品質の基準「JAPAN COLOR」

チラシや雑誌など、一般的なカラー印刷の多くは、CMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)の4色のインキを掛け合わせて様々な色を表現する「プロセスカラー印刷」という方式で行われます。

このCMYK印刷の品質を安定させるための基準が「JAPAN COLOR」という認証制度です。これは、日本のオフセット印刷における色の標準的な基準を定めたもので、多くの印刷会社がこの基準に沿って印刷機を管理しています。

「A社に頼んだポスターと、B社に頼んだ増刷分で、なんだか色が違う…」といった事態を防ぎ、どこで印刷しても安定した品質の印刷物を提供できるようにすることを目指すのが、JAPAN COLORの役割です。

色のズレを測る「ΔE(デルタ・イー)」という数値

JAPAN Colorでは、色のズレがどのくらいあるのかを「ΔE(デルタ・イー)」という数値で管理します。ΔEは「色差」を表す単位で、この数値が小さいほど、人間の目には色の違いが分かりにくくなります。

ΔEの基準は、求められる色の精度によって異なりますが、目安は以下のようになります。

ΔE基準値の目安 色差のレベル 主な用途
約5以下 2つの色を交互に見たり、少し離して見たりすると違いがわかるレベル。 一般的な商業印刷(チラシ、ポスターなど)。JAPAN Color認証の基準値
2~3 2つの色を隣に並べて、じっくり見比べると違いがわかるレベル。 高品質な写真集や美術印刷など、厳密な色再現が求められる場面
1以下 専門家でもほとんど見分けられないレベル。 医療用モニター、精密な工業製品の色検査など、最高水準が求められる分野

つまり、ΔEが5以内であれば、多少の色差はあっても「実用上は問題ない範囲」とされているのです。
色の見分け方については、印刷会社で配布している色見本帳(カラーガイド)と同じ紙の色の印刷物を約1mくらいの距離で比較した際に、色が違うと認識出来るなら色がズレてると判断してもいいでしょう。

色そのものを指定する「特色(スポットカラー)」という選択肢

色そのものを指定する「特色(スポットカラー)」という選択肢

色の基準として最も厳密な方法が「特色(スポットカラー)」です。

これは、CMYKのインキを混ぜて色を作るのではなく、あらかじめ特定の色に調合(調色)された専用インキを使って印刷する方法です。

色見本帳の「DIC(ディック)」や「PANTONE(パントン)」が有名で、「DIC-XXX番の色で!」というように、色番号で正確に指定できます。

企業のロゴカラーや商品のキーカラーなど、絶対に色ブレが許されない、ブランドイメージを左右する重要な色に使われます。CMYKでは再現が難しい鮮やかなオレンジや、金・銀・蛍光色なども特色インキならではの表現です。

ただし、特色印刷は専用のインキを手配し、印刷物に合った色へ調合を行い、印刷機の設定も必要になるため、CMYK印刷に比べてコストが高くなる傾向があります。そのため、小ロットの名刺やカードの印刷で気軽に利用するのは、コスト面で現実的ではないかもしれません。

【解決策】その「色」、諦めないで。デザイン会社が辿り着いた高品質オンデマンド印刷という答え

これまで見てきたように、モニターと印刷物、あるいは印刷会社による色の違いは、多くの人が抱える根深い悩みです。 特に、「小ロット・短納期」が魅力のオンデマンド印刷に対して、「手軽だけど、色の安定性や品質は少し不安…」というイメージをお持ちの方も少なくないでしょう。
私たちBATON PRINTは、その課題を解決するために、デザイナーである私たちが自ら品質を管理する、高性能オンデマンド印刷という答えに辿り着きました。

なぜ、私たちはそこまで「色」にこだわるのか?

私たちのはじまりは、印刷会社ではなく、創業以来グラフィックデザインの第一線で活動してきたデザイン会社です。
「印刷会社を変えたら、企業のロゴカラーが変わってしまった」 「モニター上で完璧に調整したのに、仕上がった印刷物がくすんでいる」
これらは、私たち自身がデザイナーとして印刷を発注する立場で、何度も悔しい思いをしてきた実体験です。だからこそ、名刺一枚、カード一枚にかけるお客様の「イメージ通りに、美しく仕上げたい」という想いを、誰よりも深く理解しています。

この想いを自分たちの手で実現したい。その一心で、プロの目で厳選した機材を導入し、自社での印刷事業をスタートさせました。

プロの目で選んだ「高性能オンデマンド印刷機」の実力

私たちが選んだのは、富士フイルムビジネスイノベーション社の最新鋭オンデマンド印刷機です。数ある選択肢の中からこの一台を選んだのには、明確な理由があります。

  • オフセット印刷に迫る、圧倒的な表現力
    2400dpiという高解像度が、デザインの細部や小さな文字までくっきりとシャープに再現。オフセット印刷に迫る品質を、オンデマンドの手軽さとスピードで実現します。
  • 滑らかで美しい、豊かな階調表現
    高精細なトナー技術により、写真やグラデーションもざらつきなく、驚くほど滑らかに表現。お客様が作り込んだデザインデータの魅力を最大限に引き出します。

デザイン会社だからできる、BATON PRINTの約束

単に高性能な機械を導入するだけでは、お客様のイメージを完全にカタチにすることはできません。私たちはお客様に、以下の3つをお約束します。

  1. デザイナーによる一貫した品質管理
    データチェックから印刷オペレーション、仕上がりの確認まで、色のプロであるデザイナーが責任をもって一貫管理します。
  2. 小ロットでも妥協しないクオリティ
    名刺やショップカードなど、たとえ小ロット・多品種の印刷であっても、一切の妥協なく最高の品質でお届けします。
  3. お客様の「想い」に寄り添う伴走力
    私たちは、お客様のデザインに込められた想いを深く理解し、それを忠実に再現するパートナーでありたいと考えています。

「モニターと印刷の色が違う」「今の印刷品質に満足していない」。 もしあなたが色に関するお悩みを抱えているなら、ぜひ一度、私たちBATON PRINTにご相談ください。安心と高品質の印刷物で、あなたのビジネスを力強くサポートします。