印刷における文字の最小サイズを知らないで、印刷をすると「モニター上では読めたのに、印刷したら文字が潰れてしまった…」なんてことになりかねません。
印刷物における文字の「可読性」は、情報を正確に伝えるための生命線です。特に、名刺やショップカードなどで小さな文字を使う場合、フォントのサイズや種類の選び方が、仕上がりの品質を大きく左右します。そして、小さすぎる文字は印刷時に潰れたり、かすれたりする原因となります。
このページでは、オンデマンド印刷で美しく文字を再現するための、適切なフォントサイズと選び方のポイントを解説します。

1. フォントサイズと「見た目の大きさ」の基本

DTP(デスクトップパブリッシング)で一般的に使われるフォントサイズの単位は「ポイント(pt)」です。 1ptはおよそ0.35mmに相当しますが、文字を選ぶ際は、mm単位でなくptの単位で数えます。なお、Webデザインにおいては「ピクセル(px)」という単位も頻繁に使用されますが、これらの単位は異なるものの、文字の大きさの概念は共通しています。

フォントを選ぶ注意点としては、同じポイント数でも、フォントの種類(書体)によって見た目の大きさは異なります
これは、フォントが文字本体だけでなく、文字の上下左右に設計された「余白」を含んでデザインされているためです。この余白の取り方がフォントごとに違うため、同じサイズでも大きく見えたり、小さく見えたりするのです。

様々な種類のフォント

2. 推奨フォントサイズと限界サイズ

では、印刷データにはどのくらいのフォントサイズが必要なのでしょうか?
当社のオンデマンド印刷では、可読性を保つための推奨フォントサイズを 6pt(ポイント)以上としています。

なぜ小さすぎる文字はNGなの?

それは、オンデマンド印刷の特性と、人間が文字を認識する限界が関係しており、小さすぎる文字には以下のようなトラブルが発生しやすくなります。

濃度の薄い文字は、かすれて読みにくくなります

印刷では、色の濃淡を「網点」と呼ばれる非常に小さな点の密度で表現します。例えば「C シアン 20%」は、水色の点を20%の密度で印刷することで表現しており、拡大すると以下のようになってます。

網点がわかる拡大した写真

そのため、文字の濃度が薄い(特に20%以下)場合、網点の隙間が大きくなり、文字の線が途切れたように見え、非常に読みにくくなります。小さな文字に薄い色を設定するのは避けてください。

3.【条件別】注意が必要なフォントサイズ一覧

文字の色や紙の種類によって、推奨される最小サイズは変わってきます。一般的な目安は以下の通りです。

条件 推奨最小サイズ 補足・注意点
K100%(スミベタ)の文字 5~6pt 最も再現性が高く、比較的小さな文字まで読めます。ただし可読性を考慮し6pt以上を強く推奨します。
色付き・リッチブラックの文字 7~8pt 版ズレによる滲みを防ぐため、K100%より一回り大きいサイズが必要です。
白抜きの文字(背景に色) 7~8pt 背景のトナーに文字が埋もれて細くなりやすいため、太めの書体(ウェイト)を選び、大きめのサイズに設定してください。
細いウェイトのフォント (Light/Thin等) 8pt以上 線が細すぎて印刷時にかすれたり、途切れたりする可能性があります。特に30%以下濃度は要注意。の使用は慎重に検討し、大きめのサイズでご使用ください。

5. 印刷に適したフォントの選び方

6. よくある質問と注意点

Q1. 文字はアウトライン化した方が綺麗に印刷されますか?

A1. アウトライン化によって印刷品質が大きく向上するわけではありません。

アウトラン化は、PC環境にないフォントの文字化けやレイアウト崩れを防ぐために、データ入稿時のトラブル回避策として非常に有効です。ただし、アウトライン化すると若干に文字が太くなるため、極端に小さな文字では印象が変わる可能性に留意してください。

文字のアウトラン作成の詳しい内容は、データチェックガイドの「すべての文字をアウトライン化」ページにてご確認ください。

【上級者向け】どうしても6pt未満の文字を使いたい場合

推奨はできませんが、デザインの都合上どうしても5ptなどの小さな文字を使用したい場合は、以下のリスク対策をご自身の判断で行ってください。

これにより、網点による文字のかすれを軽減できますが、文字潰れや見当ズレのリスクがなくなるわけではありません。